昭和32年(1957年)

昭和32年3月9日 高新ホール
大阪放送交響楽団 高知放送局開局25周年記念演奏会 指揮 山田和男
1 交響曲第5番「運命」(ベートーヴェン)
2 ピアノ協奏曲イ短調(グリーグ)
       独奏 小柳芳子
3 交響詩「フィンランディア」(シベリウス)

創立25周年記念演奏会
5月18日 高知市中央公民棺 1 越天楽(近衛秀麿編)
2 交響曲第5番「運命」(ベートーヴェン)
3 楽劇 ベール・ギュント第2組曲(グリーグ)
  1. イングリッドの嘆き
  2. アラビアの踊り
  3. ベール・ギュントの帰郷
  4. ソルヴェーグの唄
4 ジプシー男爵 序曲(ヨハン・シュトラウス)
出演 53名 人場者1500人

高響25周年に寄せて(抜粋)

東京芸大教授 颯田 琴次
 私も東大音楽部長として長い間経験して来たが、その運営には楽しい事もあり又言い知れない苦しい記憶もある。が素人の楽団で、このように多い演奏会数と長い年月の歴史を持つ楽団は、先づ類例を見ない事であろう。今後もこの国の文化のために更に技術を磨き楽団の精華を発揮せられるよう望みます。

N響指揮者 山田和夫
 古城先生、高響の皆さん。おめでとう。ニホンのオーケストラの歴史は、まだ30年そこそこだのに、25周年とは「無形国宝」にも似た行為です。東京の交響楽団でさえ幾たびか絶えては又拓かれて今日に至っています。皆さんの永い間の困苦は想像に余りありますが音楽への愛情・強い意志・人の和・の集大成によって今日の祝賀を迎えられおめでとう。N響の5ツ歳下の弟分になるのですから。

高知交響楽団の演奏を聴いて(高知新聞投書欄より)

東京都大田区 米沢了助(教員)
 計らずも高響を聴いて、あの夜の情景といいますかその雰囲気が頭の中に残って去りません、田舎の素人楽団としてはマアよくやっている位の感じですが、演奏の良い悪いではなく「ここに泉あり」の純粋版を日のあたりに見た感じです。オーケストラは他の音楽に比較して、単に高度の芸術ということでなく、聴衆に与える「力」とか感激する迫力、というものを現実的に持っているので、それをあの夜感じました。素人の集りで定期演奏を行い25年もの歴史を持つと聞いて、驚異と感激に打たれました。僻地の小都市でこの楽団を持つ高知市の皆様は幸福といってよいのではないでしょうか。市民の皆様にお願い申し上げたいことはこの楽団をもっと育成する責任を持っていただきたい、瀧河洞や桂浜はそのままで立派ですが楽団ま生きた文化財ですので、先づ成長するように育てなければなりません。

6月29日
午後6時半
市中島町商工会議所食堂にて、来賓の方々と共に25周年祝賀会を開く。
須崎市演奏会
6月21日 須崎市吾桑中学校講堂 1 交響曲 第5番「運命」(ベートーヴェン)
2 バグダッドの太守 序曲(ボアェルデュー)
3 セレナーデ(ハイケンス)
4 ハンガリア舞曲 第5番(ブラームス)
5 歌劇「カルメン」よりトレアドール(ビゼー)
   指揮  浜田善三郎
後日同校生徒数名より感謝の感想文が送られてきた。
高知刑務所慰問音楽会
6月
日時不明
高知刑務所 1 ハンガリア舞曲第5番(ブラームス)
2 交響曲第5番「運命」第1楽章(ベートーヴェン)
3 「ジプシー男爵」序曲(ヨハン・シュトラウス)
4 小曲  ソルページの歌(グリーグ)
     五ツ木の子守歌(浜田善三郎編)
     森の水車(アイレンベルグ)
     セレナーデ(ハイケンス)
 

 感想文2通(抜粋)

(1)
 高響を迎えて喜びのままに感想を綴ります。
 私は普通の楽団は度々見ましたが交響楽団は初めてでした。聴いて芸術は偉大なりと今更のように感じました。ハンガリヤンダンスはわかりました。他の初めて書く曲でも、その良いことはわかり、心を打たれました。
 各楽器が自分だけ良い子になろうと考えず、調和を乱さずに演奏することは、社会生活でも各々の役目に応じた働きをすることにより、保たれていると同じです。調和された美しさ、それは偉大であります。一時間私達を夢の国に遊ばせて戴いたことは、一生を通じて忘れることの出来ぬ思い出となりましょう、又来て下さるよう祈ります。

(2)
 私は(旧制)中学時代音楽部に籍を置き、ピッコロやトランペットを吹いて、お玉杓子を追っかけたこともあった(中略)。
 ベートーヴェン「運命」の第一楽章は私の胸を決りとるように講堂の中を流れて行った。演奏が始まるまでは「むつかしいわからない交響曲より、流行歌でもやれと憎まれ口を叩いていた者達もヒソと囁く者さえ居なかった。
 五ツ木の子守唄はせつないまでの郷愁を呼び、ハンガリア舞曲第五番、ソルページの歌、シュトラウスのプレリュードジプシー男爵まで、息苦しく昂まった興奮は、最後の曲「蛍の光」のメロディーに合わせた我々の合唱で、ポッチリと涙の雫を落とさせ盛り上った感激の中へ追いこんで行った。(後略)

定期演奏会
11月23日(土)
7時
高知市中央公民舘 1 歌劇 後宮よりの逃走 序曲(モーツァルト)
2 交響曲 未完成(シューベルト)
3 土俗的三連画(伊福部昭)
     1.同郷の女達(甚句の速度で)
     2.ティンペ(アイヌ語の地名)
     3.パッカイ(アイヌの唄)
4 舞踊組曲 白鳥の湖(チャイコフスキー)
    第四幕 湖のほとり
     1.第1景
     2.ワルツ
     3.白鳥の湖
     4.ハンガリー舞曲
出演
1Vn11
2Vn9
Va3
Vc5
CB4
Pic1
F13
0b2
Cl2
Fg2
Hr4
Tp2
Tb3
Tub1
Tim1
Per4
賛助出演 Piano1
 計58名
作曲者伊福部昭氏
1914年北海道釧路に生まれ、北海道大学林学科卒業後林野局勤務のため5ケ年間奥山探くアイヌ部落で生活した。1944年満州国新京音楽団に招聘された。1946〜53年の間東京音楽学校で作曲科教授を勤めた。門下に芥川、黛氏等を出している。作曲はチェレプニンが来朝したとき短期間、正規に近代管弦楽法と作曲法を学んだ外は殆んど独学で勉強した。作品は「日本狂詩曲」が、パリでチェレプニン賞第一席に入賞したほか名曲ばかりで、現在四曲各種国際的音楽祭で入賞している。コルサコフ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフを崇拝し、ロシア民族音楽を手本とし、アイヌ音楽を基盤とした独特のリズムと旋律に、特異的性格を持つ新しいスタイルを築き上げた。

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