昭和31年(1956年)

越知町教育委員会主催音楽会
1月22日
2時30分
越知町いなり座 1 交響曲 ハフナー第1楽章(モーツァルト)
2 ペルシャの市場(ケテルビー)
3 ドナウ河の漣(イヴァノヴィチ)
4 ロマンス ト長調 へ長調(ベートーヴェン)
    ヴァイオリン独奏 中村真奈
5 バグダッドの太守 序曲(ボアェルデュー)
6 ラデッキーマーチ(ヨハン・シュトラウス)
7 組曲 「お祭り」(清瀬保二)
    指揮 浜田善三郎

 日誌より

 会場は小中学生及一般聴衆で超満員であった。実に熱心に聴いてくれて嬉しかった。演奏後町の料理屋で会食す。差入れの清酒もあり一同上気嫌で帰途につき、七時半練習場着解散す。

 越知町演奏会での思い出   正木 暢

 演奏会日誌によると、この日正木団員は「古城病院で注射されて出演した」とある。思い出すとその数日前より「カゼ」で体調を崩し、用心のため欠席することにしていたところ、古城病院より「院長先生(会長)が時間はとらせないから一寸来て貰いたい」と電話があった。仕方なしに行ってみると、いきなりペットへ横になるよう言われ待っていると看護婦が注射器を持って来て嫌応なしに腰部に針を差し込まれた。(日誌によるとザルブロだったとか)。話しが違うがと思って立ち上ると「今から出発です」。見れば貸切のバスヘみんな乗り込んでいる処。団にあったビオラを持たされて押し込まれてしまった。薬のためかアキラメの心境かはわからないが、どうやら務めを終えた頃は不思議と元気を取り戻していた。その上慰労の夕食会でも帰りのバスの中でも結構お神酒が利いて益々ハッスルし帰りついてから二、三の友と二次会をやったことを覚えている。会長は郡部へ演奏に行くときなど車に酔う団員には船酔止めの注射をしたりもしていたが強引さにアテられたことだった。
 それで又一つ思い出したことがある。アテられた被害者はもう一人いた。昭和27年頃のことだったろうか今は亡きティンパニの川田禿頭居士は、演奏会の数日前より発熱し当日も頭が上らず、出演は絶望視されかけていた。他に代りが居ないため団員一同ハラハラしていた所、開演時刻間近になって熱っポイ赤い顔で流れる汗をタオルで拭きふき馳け込んで来ると、大急ぎで調律をして出演準備をした。聞く所によると会長は自分の病院の看護婦に注射器を持たせて差し向け看病さし、開演時間に間に合うよう付添ってハイヤーで馳けつけた由であった。あの光り輝く無毛の頭部から出る湯気をアッ気に取られて大丈夫かナと思いながら見た事をマザマザと思い出す。病気を押しての出演はプロの奏者なら仕事だから当り前のことであろうが、昔のことで気楽にやっているアマチュアからすれば正業に支障が出来てはと心配が先に立ったものである。川田さんも、私も、終演後元気でニコニコしながら帰っていった事から考えると、特効薬は残念乍ら注射薬でなく音楽演奏薬だったらしい。

定期演奏会
5月19目(土)
7時30分
高知市中央公民棺 1 歌劇  魔弾の射手 序曲(ウェーバー)
2 交響曲第2番(ベートーヴェン)
3 アルマンドとアリア(伊藤隆太)
4 バレー組曲 胡桃割り人形(チャイコフスキー)
           第一部 序曲
           第二部 6曲
           第三部 花のワルツ
   指揮 浜田善三郎

出演 50名

入場料一般50円 学生40円

アルマンドとアリアは二世紀以上も昔、欧州で流行したスタイルの踊りと歌。

作曲者伊藤隆太氏
大正11年3月4日呉市生。東大医学部卒。池内友次郎、高田三郎、諸井三郎、深井史郎に師事。「弦楽組曲」「海六章」「最上川」「嬉遊曲」「旅の子」等の作品があり、第16回音楽コンクール入選、第19回コンクール作曲第1部第1位に入選した。この曲は1948年初演後手を入れ現在のようになった。

土佐山田町音楽会
8月12日
7時30分
土佐山田小学校講堂 1 管弦楽入門 「荒城の月」(浜田善三郎編)
2 「水上の音楽」 組曲(へンデル)
3 交響曲 「新世界」よりラルゴー(ドヴォルザック)
4 ロマンス へ長調(ベートーヴェン)
    ヴァイオリン独奏 中村真奈
5 トルコの巡羅兵(ミカエリス)
6 セレナード(ハイケンス)
7 円舞曲「皇 帝」(シュトラウス)
    指揮 浜田善三郎

主催 土佐山田町中央公民舘
後援 山田小PTA、地区青年団婦人会
   音楽同好会
   高知新聞社山田支局

出演 52名

「中村真奈さんは楽団25周年の記念演奏会にも参加した。現在中学一年生で画家中村博氏の令嬢である。」
定期演奏会(ロシア音楽のタベ)
11月29日(木)
7時
高知市中央公民舘 1 交響詩「中央アジアの広野にて」(ボロディン)
2 交響曲「古典的」作品25(プロコフィエフ)
3 映画音楽(早坂文雄)
   a 「再会」の主題曲
   b 「七人の侍」の間奏曲より
4 a 歌劇「ホヴァンシチナ」前奏曲(ムソルグスキー)
  b 八ツのロシア民謡(リャードフ)
   1 聖歌
   2 舞曲コリヤーダとマレダ
   3 哀愁歌
   4 道化歌(私は蚊と踊ります)
   5 小鳥の物語
   6 子守歌
   7 輪舞の歌
   8 村の踊り
     指揮 浜田善三郎
出演者 48名
1Vn8
2Vn9
Va3
Vc4
CB4
Pic1
F12
0b2
Cl2
Fg2
Hr4
Tp2
Tb3
Tub1
Tmp1
早坂文雄氏
大正3年宮城県生れ、独学で音楽を学ぶ、昭和13年管弦楽「古代の舞曲」でワインガルトナー賞受賞して認められた。代表作の「左方の舞と右方の舞」その他がある。映画音楽の分野でも活躍し中でも「七人の侍」の音楽は有名である。

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